麻痺の後遺症がある「おばあちゃん(おじいちゃん)」をこれから在宅で介護しなくちゃいけない。
食事介助ってどうすればいいんだろう?時間かかるのかなぁ。
食事介助の基本って何かあるのかしら?
介助で使える便利な道具があればいいのに。
○○病院の看護師さん、ご飯を混ぜてあげてたけどいいの?
こんな疑問を解決していきます。
「食事介助」ってなんでやるのでしょうか?
人間は食べていかなければ生きていけません。
自分で食べることができなければ養ってもらう以外、方法はありません。
人間は大きな病気をして健康が損なわれることで、はじめて何気ない生活行為に有り難みを感じるものです。
日常生活で食事介助をすることはほぼありません。
こんな場合が、当てはまるのではないでしょうか?
食事介助には適切な方法があります。
誤った方法、自己流で過信しすぎた介助を続けると食べ物を喉に詰まらせたり、誤嚥(ごえん)の原因になります。
最悪、「窒息」「肺炎」となってしまい、生命が危険にさらされますので、注意が必要です。
食事は人間の生活から切り離せないものです。
この記事で知識をアップデートすることで、リスクを減らすことができます。
執筆者の経歴
- 作業療法士10年以上
- 勤務歴(病院・介護施設・児童支援・就労支援)
- 現在は就労支援に従事(障害のある方のリクルート)
病院や施設の勤務時に日常生活の専門職として、食事介助の場面をみたり、指導をしてきました。
現場経験をもとにまとめていきたいと思います。
最後に、ICT技術の進歩を利用した食事介助を紹介したいと思いますので、知識をアップデートしましょう。
食事介助のあれこれ、在宅介護や仕事でも活用
基本的な方法、知識、道具と幅広く網羅していきますので、明日から在宅介護や仕事でも活用していきましょう。
- 【導入編】食事を介助する目的とは?
- 【学ぼう】食事の介助を通して、体の変化を知ることが大切
- 食事の介助で【守って欲しい】正しい姿勢
- 食事を介助するための基本【作業療法士的】
- 麻痺がある場合の食事介助とは?
- 意識レベルが低い方への食事介助、声掛けのタイミングは?
- 食事介助の便利道具で在宅介護のモチベーションアップ
- 近未来?食事を介助するロボットが登場
【導入編】食事を介助する目的とは?
結論は以下です。
- 口から食物(栄養)をとって機能回復を促す
- 人間の三大欲求の食を満たし生活の満足感がアップ
- できない部分のみを介助したり、動作を促して「セルフケア」を向上させる
食べなければ生きれません。
なかには寝たきりで流動食(管で栄養素を送る)の方もいますが、口から食べ物を入れて噛みしめることで生きている実感が湧いてきます。
人間の本能ではないでしょうか。
満足感が得られることで、その人の「生活の質」が向上します。
病院や高齢者施設で看護計画や介護計画をたてる時に「食事介助の目的が見つからない」と尋ねる職員さんもいました。
「生活の質」を向上させる目的だけは忘れたくないものです。
高齢者が食べる目的は厚生労働省から文献が出ています。
参考文献:厚生労働省 資料4-1 高齢者にとっての「食べること」の意義
【学ぼう】食事の介助を通して、体の変化を知ることが大切
食事介助をすることは、相手の体の変化を考えるきっかけになります。
特に高齢者は病気をして機能が失われることで回復が長期化し、介助期間も長くなりますので、介助者する側も忍耐力が必要になります。
知識があると余裕が出ますので、確認をしていきましょう。
- 高齢者が加齢と共に食事が困難になる理由
- 高齢者の食事の形態の特徴
- 病気で「寝たきり」や「麻痺症状」が伴う場合
- 【介助の基本】食事を始める前の注意点を守ろう
高齢者が加齢と共に食事介助が必要になる理由
結論:加齢に伴う機能低下(避けられない)
参考文献:愛媛県庁 別冊 高齢者のための簡単メニュー集
- 咀嚼(そしゃく力)の低下
- 嚥下(のみこみ)の低下
- 味覚、嗅覚の低下
- 食欲の低下
- 喉が乾きにくくなる
- 胃腸など消化器官の機能低下
咀嚼(そしゃく)力の低下
噛むための筋肉は咀嚼筋(そしゃくきん)といい、4つの筋肉からできています。
- 咬筋 :歯を食いしばった時のエラの部分
- 側頭筋:頭の横で耳の上あたりの部分
- 外側翼突筋
- 内側翼突筋
から、構成されます。
手や足の筋肉と同じように、段々と力が弱ってきます。
歯科の欠損も要因となる
高齢者にあるのが「歯の欠損」や「虫歯」などで「入れ歯」になってしまうことがあります。
食事をするために「歯」は欠かせなく、口腔トラブルも噛む力を弱める原因です。
嚥下(のみこみ)の低下
私たちは食べ物を飲み込む時に、一時的ではありますが呼吸が止まっています。
呼吸をしたまま食べてしまうと、食べ物が肺に流れてしまうからです。
栓をして防止してくれる役割が「咽頭弁(いんとうべん)」です。
高齢者はよく「むせる」ことがありますが、原因は咽頭弁の締まりが加齢と共に低下し、わずかな隙間ができてしまいます。
肺に異物が入ると咳嗽(がいそう)反射が起こるため、咳き込んで外に出そうとします。
これが頻繁に高齢者ではみられます。
咳き込むと胸が苦しく、痛みも伴いますので、気分も沈みがちです。
味覚、嗅覚の低下
加齢と共に味覚機能が低下していきます。
高齢者は味が分からなくなる傾向で、濃い味付けを好むようになります。
気をつけないと塩分の摂り過ぎで、健康悪化につながってきます。
匂いも分かりにくくなりますので、薄味のものは食欲をそそりません。
食欲の低下
高齢者になると様々な病気を持たれますので、内服薬の種類や量も場合によっては増えていきます。
薬の副作用で食欲がわきにくくなる場合があります。
前述した嗅覚の低下も関係してきます。
喉が乾きにくくなる
脳の「口渇中枢」が加齢と共に低下してきますので、喉の乾きがわかりにくくなります。
高齢者が「脱水症状」になりやすいのはこのためです。
水分は汗や尿だけの排出でなく、肌から蒸発もしています。
胃腸など消化器官の機能低下
高齢者になると代謝機能が低下しますので、臓器の動きも若い時と比べて機能が劣ります。
唾液、胃液が出にくくなりますので、消化不良を起こしたり、胃もたれしやすい傾向です。
胃や腸の動きが悪くなってきますので便秘になりやすく、食欲はわきにくくなります。
高齢者の食事形態の特徴【介助で必須】
高齢者になると前述した体胃の機能低下と共に、一般的な成人の食事が体に合わなくなります。
食事形態の特徴は以下です。
- 噛みきれるほどの柔らかいもの
- からだを作る、偏りがない栄養素
噛みきれるほどの柔らかいもの
歯が悪くなると食事の楽しみが半減してしまいます。(歯科に通うと誰もが体験できると思います)
硬すぎる野菜、筋(すじ)張った肉、骨が多い魚など、食べにくい食形態は好ましくありません。
ご飯も、硬すぎるものは「消化不良」を起こします。
柔らかいものばかりでいいのか? → 答えは「NO」
消化の良いものばかり食べすぎてしまうと、軟便(下痢)になりやすくなります。
とくに歯茎ですりつぶせるほどの柔らかいものばかりでは、逆に良くありません。
大切なポイントは「噛み切れるほどの柔らかさ」です。
からだを作る、偏りがない栄養素
1日分の目安
主食(ごはん、パン、麺:1日3杯ほど)
副菜(野菜、きのこ、いも、海藻料理:1日5皿ほど)
主菜(肉、魚、卵、大豆料理:いずれか1日3皿ほど)
乳製品
果物1日のエネルギー量が1400~2000kca
参考文献:農林水産省 シニア世代の健康な生活をサポート 食事バランスガイド
食事は「体を作るもの」ですから、栄養素は大切です。
在宅介護の場合、食事の準備が介護負担となっている方が多いです。
高齢者向けの配食サービスが充実してきましたので、体にあった形状がわかりにくい場合は業者にまかせてしまうことも方法です。
「味付け」や「栄養バランス」も取れており、安心できます。(家族の時間も確保できます。)
(詳細は別記事を用意します)
病気で「寝たきり」や「麻痺症状」が伴う場合の食事介助
一般的に食事はテーブルで椅子に座って食べますが、病気をきっかけに摂取方法が変わるとストレスにもなります。
寝たきりの場合
ベッドで体を起こして食べますが、多くが寝室などで介助を受けながら、あるいは用意されたものを一人で食べます。
食事は家族で食卓を囲んで食べる感覚が普通ですが、健康を損なうことで喪失感が大きくなってきます。
麻痺症状がある場合
脳血管性障害、右利き、右片麻痺を例に考えていきます。
この場合、食べる時は非効き手(左手)で食べることになります。
- 箸が使えない、使いにくい
- 利き手に比べて力が入りにくい、フォークで刺しにくい
- 細かい動きができない(皿の上のものをかき集めたり)
- 両手動作ができない
など
食事のしにくさが顕著になります。
食事がしにくいことはイラつきの原因になります。
【介助の基本】食事を始める前の注意点を守ろう
前述してきたことをもとに、注意点を抑えましょう。
ポイントを「6つ」に絞りました。
- 食事前にトイレを済ませる
- 食事をするために手を清潔に
- 食事の前に口の中をきれいにする
- 嚥下や唾液分泌を促す体操(頸部の体操、パ・タ・カ・ラ・体操)
- 食事の道具を揃える
- 食事(献立)の説明をする
食事前にトイレを済ませる
食事をすると胃の中にモノが入るため、胃や腸が動き出しますのでトイレに行きたくなります。
食べることに集中するためにも、トイレは事前に済ませておきます。
食事をするために手を清潔に
感染対策のため手は清潔に保っておくことが大切です。
ノロウイルス、インフルエンザ、MRSA、肺炎球菌など様々な感染症があります。
今は、新型コロナウイルス対策で手指消毒が必ずあります。
食事の前に口の中をきれいにする
口腔内を清潔にすることで味覚の感覚をあげます。
舌のうえ(舌苔:ぜったい)が汚れていると、味は感じにくいです。
嚥下や唾液分泌を促す体操(頸部の体操、パ・タ・カ・ラ・体操)
嚥下をスムーズにするために、頸部を動かす体操をしていきます。
こちらのリハ病が参考になります。(嚥下体操もあります)
介護施設でよく行われている「パ・タ・カ・ラ体操」
「パ・タ・カ・ラ」の発音には、頬や舌の運動が促され唾液が分泌しやすくなります。
一般社団法人 大阪府歯科医師会の「高齢者のための新しい口腔保健指導ガイドブック」に詳しく方法が記載されていますので、在宅や介護施設で、食前に取り入れてみましょう。
食事の道具を揃える
後述しますが、その人にあった使いやすい食器やスプーン、フォーク、箸などを用意しておきます。
食事(献立)の説明をする
- どんなメニューで
- 硬いのか
- 柔らかいのか
- 体にどうなのか
など、加齢と共に体の変化ゆえ、食事に対する興味が薄くなったり、食べられるのか、高齢者は特に心配される方がいます。
認知症の方であれば、何を食べているのか分からないといったこともあります。
食事から季節を感じることもできますので、食べる前の説明はとても大切です。
食事の介助で【守って欲しい】正しい姿勢
「寝たきり」や「病気の治療」などで体が起こせない場合の姿勢を解説します。
ベッドサイドで食事介助をする場合は「ポジショニング30度」
理由:誤嚥の予防、頸部の前屈を促して咽頭をまっすぐにするため
ベッドの角度を調整して、30度ほど体を起こした状態で食事介助をしていきます。
介護ベッドを使っていない場合は、布団や座椅子などで対応可能です。
重力の作用で体を水平位より 30 度 Up すると誤嚥の減少に繋がるとされていますが症状に合わせて角度を調節します.運動障害が軽度である場合は座位が最も好ましいでしょう.ロールタオルや小枕を利用し上半身・骨盤部の安定を図り,体幹を垂直に保つよう体位の保持に努めます.
引用先:嚥下障害って なあ~に? 摂食・嚥下障害でお困りの方へ ーその対策を中心としてー
試してみるとわかります。
布団やベッドに真っ直ぐ寝た状態で食べられますか?
食事を介助するための基本【作業療法士的】
現場経験をもとに、以下について解説します。
- 誤嚥を起こさない3つの介助原則
- 基本の「三角食べ」をベースに食事介助
- 食事を混ぜて介助する場合の考え方
- 食事にかけていい時間は30分以内
- 食事介助のポジション、介助者の座る位置
- 食事介助のスプーンの角度とは?
誤嚥を起こさない3つの介助原則
高齢者の介護現場で、やってしまっている職員さんがいました。
理由を考えると飲み込めるはずです。
立って介助しない
介助される側が上を向きがちになります。
介助者の手の位置が高いからです。
首が上を向いてしまうと、咽頭が真っ直ぐになりますので嚥下しにくくなります。
こういう実習、本当に大切です。
体験してみることで得られることは大きいです。
口にたくさん入れすぎないで
高齢者はとくに咀嚼(そしゃく)がしにくいです。
たくさん口の中に入ると顎(あご)も疲れてきます。
飲み込みを確認しよう
最も大切です。
食べ物を飲み込むと、喉仏が「コクン」と上がる動作が起こります。
多忙の介護現場ではマルチタスクに業務が迫られますので、確認を怠る時もあります。
「口の中が終わった」ではなく「コクン」という動作が大切です。
基本の「三角食べ」をベースに食事介助
手順は以下です。
高齢者の場合、唾液が出にくいですから口腔内を潤すことからはじめていきます。
①:お茶、汁物で口の中を潤す
②:「三角食べ」スタート(画像引用を参考に)
※嚥下の具合いによっては、近年推奨されている「ベジファースト」を取り入れることもありです。
食事を混ぜて介助する場合の考え方
結論:一般的には不適切。目的や混ぜ方の配慮が大切。
病院、介護施設などで食事をぐちゃぐちゃに混ぜて提供する職員がいます。
(ペースト形態の場合、よくみられます)
介助される側は動物ではありません。
意図的にやっていなければ「虐待行為」と思われても仕方ありません。
健康問題上、混ぜて介助する方が良い場合があります。
こういった場合は目的が明確ですから介護計画、看護計画に内容を織り交ぜる必要があります。
食事を混ぜる場合は、混ぜ方に注意が必要です。
明らかに「美味しくない」混ぜ方があります。
味覚はひとによって違いはありますが、世間一般的じゃないものはご法度です。
介助時に「栄養が偏らないように混ぜてもいいですか?」と相手に声かけをすることも大切な配慮ですから、忘れてはいけません。
食事にかけていい時間は30分以内
食べるスピードにもよりますが、ひとつの目安が「30分」と言われています。
1時間近く食事動作を続けていると、高齢者の場合はとくに疲労感が出てきます。
「食事=疲れる」では、生活の質が高いとは言えません。
面白い研究データもあります。
「食事介助が部分介助に比べて全介助」「食事介助時間が 30 分以上に比べ 30 分以内」「食事介助への恐怖がなしに比べてあり」が,食事の介護における主介護者の身体的負担感を高く感じるリスクが高くなる(P<0.05)ことが示された。
(中略)
食事の介護における主介護者の身体的負担感には,「食べ物に無反応」「口の中に取り込めない」「唾液が口から流れる」の 3 つの症状が関連していることが明らかとなった.
・食事介助における主介護者の恐怖には,「食事の途中で寝てしまう」「口の中に取り込めない」「水分でむせる」「食事でむせる」の 4 つの症状が関連していることが明らかとなった.
引用先:食事の介護における主介護者の身体的負担感及び恐怖-要介護者の摂食・嚥下障害の症状との関係-
介助する側も恐怖心が背景にあります。
など、心理的背景が介護負担を高めてしまいがちです。
私の主観ですが、30分以内は適度だと考えています。
介護負担があっても、つまらせたり、誤嚥性肺炎を起こして病院に運ばれるよりは良いのではないしょうか。
時間で食べきれなかったら「おやつ」の時間を設けて、足りない栄養素を補いましょう。
食事介助のポジション、介助者の座る位置
様々な介助方法があるなか、座る位置によって介助する手を使い分けることも大切な観点です。
実際は、そこまで意識しないことが多いです。
(麻痺があったりすれば別ですが、)
介助する手が異なるからといって、事故に繋がったケースは臨床ではみたことがありません。
「本人のペースに合わせて介助する」
主体は「本人」ですから、相手に合わせる観点を忘れないことが大切です。
食事介助のスプーンの角度とは?
ポイント:スプーンは真っ直ぐ
舌の中央ほどに入れ、引き抜くときに「角度」をつけないなよう真っ直ぐにすることがむせない工夫です。
食べにくい場合は、スプーンの大きさを変えるのもよい方法です。
口に入らない大きさで介助しても食べにくいだけですが、デメリットもありますので抑えましょう。
栄養摂取や介助負担という部分でデメリットもありますが、誤嚥防止の観点、本人の体調に合わせて変えることが望ましいといえます。
麻痺がある場合の食事介助とは?
この3つを確認しましょう。
- 片麻痺なのか、単麻痺なのかを必ず確認
- 麻痺側に残らないよう食事の姿勢を配慮をする
- 高次脳機能障害(半側空間無視)、認知症はどうなのか?
片麻痺なのか、単麻痺なのかを必ず確認
- 家族であれば、病院や介護施設の看護師、介護士
- 病院や介護施設の職員さんであれば、事前情報(カルテ)
誤嚥に繋がりますので、必ず確認しましょう。
単麻痺は手首だけ、足首だけ、片腕だけなど、四肢の単一の麻痺をいいます。
麻痺側に残らないよう食事の姿勢を配慮をする
歯の治療時に麻酔をしたことはありますか?
口の周りの感覚や痛みがなくなります。
麻痺している状態で「うがい」をしてみると、麻痺している側から水が吹き出ます。
脳血管障害で麻痺が残ってしまうと、口周りはおなじような状態になります。
片麻痺は体の正中線から半分にかけての手足に症状がでます。
食道も同じで、感覚がないところに食物が通っても分からないのです。
うっかり詰まってしまった場合も気づきません。
介助時は「麻痺が無い部分」に食事が通るよう工夫していきます。
口の中も、麻痺側は食べ物が残りやすいので口腔ケアで注意が必要です。
高次脳機能障害(半側空間無視)、認知症はどうなのか?
左片麻痺に多いのが左半側空間無視
目で見ているにも関わらず、視界の左半分が認識できなくなります。
上の図であれば、エビフライは食べますがお刺身やご飯は食べません。
むしろ、「ご飯はないのか?」と尋ねることもあります。
前述しましたが、食事前の説明はとても大切です。
意識レベルが低い方への食事介助、声掛けのタイミングは?
食事介助の経験をもとにまとめます。
下記を参考にしています。
食事の前の前に必ず声かけ
「意識レベルの波」を探っていきます。
具体的なアクション:声かけをする、肩をとんとん叩く、手を握る など
反応の観察:うなずき、まばたき、手の動き など
観察しながら、意思疎通が図れるか、食べる直前まで確認をしていきます。
(声かけをしながら行います)
意識レベルが低いなか、無理やり食事をすると「窒息」の原因になります。
反応が得られた場合
こんな順番で介助していきます。
- はじめに「水分」を少量から少しずつ入れる(お茶、味噌汁など)
- 冷たかったり、温かい刺激でさらに覚醒や反応を促す
- 声かけをする
- 覚醒の安定が確認できたら、少量の固形物で咀嚼(そしゃく)を確認
- 飲み込みまでいけたら、少量で「三角食べ」を実行
(常に声かけを忘れず)
何も反応が得られない場合
声かけをしても、体に刺激を入れても反応がなければ、無理やり食事をしても「誤嚥のリスク」が高まるだけです。
食事の時間を変更して様子をみていきます。
寝かしておくだけでは解決しません
- 離床させる(背もたれをあげる、車椅子に乗せる、座位姿勢を取らせる)
- 話かける(声かけ)
- 手を握る
- 音楽を流す
など
「アクション」が大切です。
食事介助の便利道具で在宅介護のモチベーションアップ
どんな介助道具があれば、在宅でも介護施設でも介助がしやすいのでしょうか?
食事動作は「生活リハビリ」でもありますので、必要以上に便利にしすぎると身体機能を低下させてしまいます。
Amazonやドラッグストアなどでも介護用品が購入できます。
(「介護用おむつ」等もまとめ買いして送料無料にしていきましょう)
このセクションでは在宅介護負担を減らしつつ、生活リハビリも行える観点で「食器」や「スプーン」にフォーカスしていきたいと思います。
自宅にある食器で食事ができるグリップ
柄を太くするグリップ
使い慣れたものが使えなくなると体の衰えを感じ、喪失感も自然と湧いてきます。
特にスプーンやフォークなどは、小さいものを掴んで操作をするため細かい動きが必要になります。
手の動きが悪くなると力を込めにくくなりますので、握りやすく柄のを太くすると解決できることが多いです。
掴みやすさは【柄の小さいもの < 柄の大きいもの】
柄を太くする製品はAmazonなどのサイトで購入できます。
この2つは高すぎず、コスパが良い印象ですので「おすすめ」。
こういうのが一つあると、非常に便利です。
介護用のスプーンがなくても使い慣れたものが代用できますので、使う側も安心できます。
ドラッグストアは決まった製品が多いため、Amazonなどのショップで色々みて発見しましょう。
(レビューを参考に)
口当たりを考慮したスプーン、フォーク
少し高めの「カトラリー」
価値観の問題になりますが、私は生活していて「食器類は安いもので良い」という考えでした。
しかし、妻と高級レストランで食事をしたときに、食器の変化で食べやすさが変わるということに気づきました。
「たかが食器」と思われる方もいると思いますが、食事介助が必要になったり、食べにくくなってしまうと困り事も多くなりますから、こだわった製品は必ず満足感を与えてくれます。
単体で「セット商品」並の価格ですが、コスパに優れています。
ひとつあるだけでも「食事の幸福度」は上がると言えます。
介助される側、する側も負担が減ることになりますので、こういったものは積極的に導入することで生活の質が向上します。
※注意※スプーンやフォークの先端が曲がった製品の導入について
あれば便利かと思いますが、病気が進行したり、具合いが悪くなることで使えなくなってしまうことが多いです。
高齢者は病気によって体調も変化しやすい。
無理に購入するより、前述したような「グリップ」「口当たりのよい食器」をおすすめします。
イライラしない、させない。在宅介護で使える食器類
など、
通常の食器は、機能低下した場合には扱いが難しいことが多いです。
介護用の食器は構造を工夫して、食べにくさを補うものです。
こういうお皿がひとつあるだけでも、介助負担の軽減に繋がります。
自宅にあるアイテムだけで完結させようとすると経済負担はかかりませんが、あなたの負担が増していくだけです。
【必須】服を汚さないためのエプロンで負担軽減
こぼしながら食べると衣服もすぐに汚れてしまいます。
食事は毎日のことですから、ちょっとした工夫で快適に過ごせたほうが負担も少ないです。
ひと昔まえに比べると、色々なエプロンが発売されています。
使い捨てもコスパが良いですし、災害時も役立ちます。
洗って使えるタイプは耐久性が向上し、デザインもオシャレになってきています。
すぐ破れたり、汚れが落ちないといったことも減少しています。
「とろみ剤」で飲み込みスムーズ
味噌汁、飲み水、お茶などの液体に混ぜるだけで「とろみ」がつきます。
むせが減らせますので、おすすめです。
とろみ粉は「混ぜ方・入れ方」にコツがあり、失敗するとよくダマになってしまってました。
商品改良がすすんで質もよくなり、コスパ重視の商品が出てきています。
近未来?食事を介助するロボットが登場
記事のまとめに入っていきますが、ちょっと予備知識です
(流しても問題ありません)
人材不足に陥っている介護業界ですが、ICTを導入することを厚生労働省が推進しています。
気になったのが、
脊髄損傷、筋ジストロフィー、関節リウマチといったご病気で、手が動かせない方に向けた商品です。
近年、顔認証技術がスマホにも導入され開発が進んでいます。
2025年には高齢者が増加することが示唆されています。
将来は寝たきり、認知症の利用者の食事介助を「ロボット」が行う未来も、見えてきているのもしれません。
食事介助時のセキュリティを考える
病院や介護施設などによくありますが、食事介助のために職員(人手)がとられてしまい、見守りが不十分になるケースがあります。
食事をした後は、血糖値も上昇しますので食前に比べて反応力が下がります。
こんな時によく転倒事故が起こります。
人の代わりにセンサーを利用したりすることも推奨されていますが、倫理的な問題から議論も湧いており、二極化している印象もあります。
時代はまってくれません。
新しい価値観を受け入れながら、落としどころを上手い加減で見つけていく工夫が求められているのかもしれません。
【まとめ】食事介助のあれこれ、在宅介護や仕事でも活用
- 食事介助を通して、高齢や病気による体の変化と向き合う
- 加齢や病気よって体の構造変化が起こるため、合わせた対応が必要
- 正しい姿勢で窒息、誤嚥下を予防する
- 食事前の準備は、誤嚥防止をするための意味がある
- 基本的な介助原則を守ることは、誤嚥防止になる
- 麻痺がある場合の食事介助は病状把握が大切
- 意識レベルが低い時は覚醒を促してから食事介助を行う
- 食事介助の便利道具で、介助する側、される側も生活の質が上がる
- 近い将来、食事介助はAI化が進むかもしれない
最後までお読みいただき、ありがとうございます。
食事の介助は考えていくと奥が深いです。
何気なく生活していると、食事の介助したり、されることはほぼありません。
健康なかたも、病気をキッカケに何気ない生活に有り難みを感じるものです。
在宅介護、介護施設では終わりが見えません。
人の命の終わりを知っているのは神様だけです。
食事は「生きている」と実感できる行為ですから、できる限り自分で行えるよう健康を保つことが大切です。
意図しないことで、介助される側が不利益にならないよう、気をつけなければなりません。
近い将来、どんな人も介助できる「介護ロボット」が開発されるかもしれませんが、人と人が関わることで感じ取れる「感情」はとても大切です。
食事介助から分かることは沢山ありますので、ひとつの指標にしてみると良いかもしれません。
⏬「在宅介護」についてはこちらの記事で網羅しています。⏬
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