夫(会社員)、私(主婦)、息子(大学生)、
祖父(80歳)、祖母(84歳)の5人家族
田舎で一人暮らしのお婆ちゃんが変なの。認知症が進んだのかしら。
たまに行くと部屋も汚いし、汚した下着も床にあって、いつのか分からない惣菜も散乱してる。
どこまでやらせておいていいんだろう。。。
こんな悩みありませんか?
地方で一人暮らしをしている親が認知症になった場合、どこまで継続させるのか判断に困ると思います。
臨床経験を活かし、生活で困ることについて振り返り、まとめますので参考にどうぞ。
執筆者の経歴
- 作業療法士10年以上
- 勤務歴(病院・介護施設・児童支援・就労支援)
- 現在は就労支援に従事(障害のある方のリクルート)
介護、認知症ケアが仕事の原点です。
高齢者の自宅訪問も行い、一人暮らしのサポートも行ってきました。
安全な生活が成立することで、遠方に住むご家族も安心すると思いますが、必ず限界はどこかで訪れるものです。
認知症の一人暮らしの限界を見極める要点
いつまで一人暮らしをさせておけばいいのか?
介護に携わる方がはじめての方でも、分かりやすい観察ポイントを設けてみました。
認知症といっても個人差がありますし、軽度から重度まで様々です。
場合によっては介護認定の適応ケースもあります。
基本の5項目【認知症の一人暮らしが限界に達する基準】
結論:「生活行為を忘れる」がどの程度なのか
認知症で一人暮らしを継続するために必要なチェック項目やポイントを設けて解説をしてきます。
高齢者の一人暮らしに欠かせないものは以下です。
- 食事の準備
- 体の健康管理
- 居住や身辺の清潔管理
- 火の始末
- 土地勘
食事の準備
認知症であっても、食事をすることは生活に欠かせません。食事は食べる行為だけではなく、準備が必要になります。
※「料理」という概念は外します。用意したものを食べる行為が介護では簡単だからです。
確認事項①:☑お湯を注げるか
火の始末でも触れますが、コンロでお湯を沸かす行為は危険ですので高齢者の一人暮らしでは電気ポットの方が安全性も高いです。
カップ麺、即席味噌汁、フリーズドライ食品などお湯を注ぐだけで簡単に食べることができる食品も多いです。高齢者の場合、「お茶のみ」も活動のひとつですから、「お湯を注ぐ」という動作は食事に繋がる一つのポイントと言えます。
確認事項②:☑電子レンジであたためられるか
電子レンジは高齢者の食事を支える文明の利器になってきています。
調理ができなくても食事は全く困りません。電子レンジは手軽なため、使えるかどうかは最大のポイントです。
今はお弁当を届ける配食サービスが充実していますので、温めるという行為ができれば、さらなおいしく食事が楽しめます。
➡ こちらのページで解説予定です。(準備中)
体の健康管理
一人暮らしをする場合、決まった時間に寝て・起きて、外の空気を吸ったり、好きなことをしたりしながらリズムある生活を送ることが健康上大切と言えます。
確認事項:☑規則的な生活ができているか?
認知症は物忘れだけでなく、場合によっては鬱病などのメンタル不調を伴います。
カーテンを締め切った部屋の中にいたり、家の中に引きこもるケースも見受けられます。一人暮らしだと時間の使い方も自由ですから、悪い生活が習慣化されてしまうリスクがあります。
昼と夜が分からなくなったり、生活リズム全般が乱れることもありますので、規則的な生活を送ることができているかは大切です。
居住や身辺の清潔管理
健康な生活するために身の回りに気が使えることは大切です。
確認事項:
☑部屋の空気の入れ替えをしているか
☑着替えをせず、同じ衣服を着続けているか
☑部屋の掃除をしているか
☑整理整頓をしているか
どのくらい可能でしょうか?
一人暮らしでも清潔に気を使うことは健康維持に繋がります。
認知症がひどくなったり、精神機能の低下が低下することで、身の回りのことに興味が向かない状態になります。特に、ご本人の若い時と比べ、生活様式が変化している様子があれば一人暮らしは余計に注意が必要です。
清潔管理のポイント:☑ごみ屋敷の状態=タスク処理苦手
認知症が進行することで、複数の事柄を処理することが苦手になります。
掃除や整理整頓はまさに同時処理作業ですから、できなくなるとちらかる傾向となります。
一人暮らしでゴミが散乱すると転倒リスクも高まりますので注意が必要です。
火の始末
よくあるのが、調理していたり、ヤカンをかけっぱなしにして焦がしてしまうことです。
火災に直結するためガスレンジの使用は慎重に判断しなければなりません。
IH式も流行っていますが、使い慣れていない高齢者世代からすると、理解が難しいものです。
火の始末ポイント:代替品で解決する問題では無い
こちらに事例があります。
取り扱いがしっかりできなければ、IH式にしても事故は起こり得ます。
鍋を焦がすことが増えた時点で、取り扱いを控えるように話し合いをする方が懸命かもしれません。認知症かつ一人暮らしで火の取り扱いが不十分の場合、火事の恐れが大きいです。
冬場のポイント:☑暖房器具も要注意
特に「片付け」がしっかりできない場合は、石油ストーブは高リスクです。石油ファンヒーターでも、燃えやすいものを放置することで火災に繋がりますし、やかんを乗せるストーブも同様です。
こたつも強火だと火傷のリスクがありますし、脱水に繋がることも想定できますから、夏場はよくても、身辺整理ができないことが冬の課題になってしまうことがしばしばあります。
認知症によって機能低下が起こることで「予測」「判断力」の低下がありますので、冬は余計に注意が必要です。
土地勘が分からなくなる
住み慣れている土地でも、散歩等をしていて家との位置関係が分からなくなる症状があります。
認知症でみられる見当識障害です。
確認事項:☑近所で迷子になることはないか
近所に出てから帰れなくケースもあり、意味もなく帰る場所を探し続ける行為は徘徊といえます。行方不明になることで、ご家族以外にも警察や地域への協力も必要となります。
最悪、行方不明となれば心配が尽きません。あなたの家族は一人暮らしをしても大丈夫でしょうか?
こんな場合は困る【認知症で一人暮らしは限界】
認知症になっても、一人暮らしを継続したいと頑固に気持ちを曲げないケースがありますが、とくに以下は困ります。
- できないことを認めない
- 認知症の進行が不完全、まだら様
本人ができないことを認めない場合
身の回りのことができなくなってきても、何でもできると認めないケースもあります。
自尊心を尊重した対応を
認知症になって自分を認めない方ほど、老いに対する恐怖が強かったり、元気であった時の自分が分からなくなっていることが考えられます。
受容することは、とても難しいことです。
同じ世代同士で価値観を共有できる環境があれば、少しは考え方も丸くなることがありますので、積極的に交流できる場に顔を出すことは重要です。
一人暮らしの場合は刺激も少なくなりがちですから、交流は精神面の安定に繋がる大切な内容です。
認知症の進行が不完全、まだら様
しっかりしていそうで、そうでない。
認知症の診断があっても、この状況が一番難しいです。
できているとき、できていない時の差が激しい場合は、キーパーソンが本人の生活水準、変化を理解しておくことが求められます。
キーパーソンが、一人暮らしを継続させるか否かの判断をすることになるからです。
どうすればいいの?認知症で一人暮らしが限界の場合
言うことを聞かない、本人が理解しないなど、困ることは発生します。
解決策は
- 本人と今後の生活について話し合いをしておく
- 行政に相談する
本人と今後の生活について相談
親子、親戚など本人のキーパーソンになる方を集め、今後のことについて決め事をする場があれば困ることも少ないはずです。
その際、本人がしっかり納得するようにすることが大切です。
認知症の影響で、話し合いをしたエピソードを忘れてしまい、言ったか言わないかにもなりますので、スマホで撮影しながらの会談も、説得力という意味では役にたつ方法です。
行政に認知症の一人暮らしを相談
行政に介護関係の窓口がありますので、まずは相談することから始めましょう。
安否確認コミュニティ
自治体が主体的に行っている高齢者世帯向けのコミュニティ等に登録する方法があります。
担当者が
- 一人暮らしをしている高齢者世帯に定期的な訪問
- 自宅に非常事態時に使える緊急通報装置を設置
をして下さいます。
また、自治体の委託先による見守りパトロールを受けることもでき、安心して暮らせるための支援が受けられます。
【まとめ】認知症の一人暮らしの限界を見極める要点
結論:
「生活行為を忘れる」がどの程度なのか
- 食事の準備
- 体の健康管理
- 居住や身辺の清潔管理
- 火の始末
- 土地勘
認知症は記憶が突然抜けるようなことが起こります。
覚えていたことが突然分からなくなる恐怖感が大きく、認めたくない防衛本能も働きます。
現実的に一人暮らしを考えていくと、進行具合によって判断する時期が必ず訪れます。
どうしても継続が必要な場合もありますから、事前に取り決めをしたり、自治体に相談をして、介護者、キーパーソンも負担が減るように行動することがベストと言えます。
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