夫(会社員)、私(主婦)、息子(大学生)、
祖父(80歳)、祖母(84歳)の5人家族
軽い認知症の祖父がこのごろ怒りっぽくなって困るわ。融通が利かないところが前より強くなって、かと思えば体が弱ったことを理由に「あれやれ」「これやれ」で甘えるかのように騒ぎ立てて。
毎日毎日、、、もう疲れた・・・
こんな悩みありませんか?
認知症が軽くても、暴言があったり、わがままな態度だと介助もしにくいです。
「キレる老人」が社会問題になっていますが、認知症と正常の境界型は対応も難しいです。
執筆者の経歴
・作業療法士10年以上
・勤務歴(病院・介護施設・児童支援・就労支援)
・現在は就労支援に従事(障害のある方のリクルート)
私の仕事の始まりは老人介護、認知症ケアです。
- 認知症で暴言をはく
- 認知症でわがままになる
本来であれば、年齢を重ねると人間性がより洗練されるものですが、こうなってしまうと人間関係を継続させるうえでも、困ることが発生します。
しかし、忘れてはならないのは
「なりたくてなっていない」
というところです。
理由を解説しながら、認知症によって「わがまま」や「暴言」をはいてしまうことについて深掘りします。
認知症でわがままに?暴言の本質とは
認知症は、
- 加齢による機能低下
- 病気に起因するもの
ざっくり分けると大きくこの2つに分けられます。
認知症、わがままや暴言の理由【医学的】
認知症は脳の器質的(脳の機能)変化により起こります。
20歳を超すと脳は発育をやめて、逆に加齢とともに少しずつ小さくなり始めます。40歳ごろからはCTやMRIなど脳の画像をとってみると、前頭葉と呼ばれる部分を中心に脳の萎縮(いしゅく)が認められるようになります。
引用:http://www.ncvc.go.jp/cvdinfo/pamphlet/brain/pamph68_2.html
萎縮は脳が小さくなることです。
加齢によって脳全体が小さくなり、機能低下が起こってきます。
年をとって、「物覚えが悪くなった」と感じるのはこのためで、加齢による認知症は誰もが当てはまります。
慢性硬膜下血腫(頭部を強打した後に脳の表面に徐々に血がたまる病気)や正常圧水頭症(脳脊髄(せきずい)液を収容する脳室という部分が少しずつ拡大する、原因不明の病気)の場合は、脳外科手術によって脳の働きが復活する可能性があります。
引用:http://www.ncvc.go.jp/cvdinfo/pamphlet/brain/pamph68_3.html
病気による場合は、病巣を取り除くことで、脳機能が回復する場合があります。
しかし、
変性疾患(アルツハイマー病など)、脳血管障害、頭部外傷、脳腫瘍(しゅよう)、中毒、感染症などによって生じる多数の脳細胞の死、または異常化を意味します。
引用:http://www.ncvc.go.jp/cvdinfo/pamphlet/brain/pamph68_3.html
通常、この障害は「不可逆的」(元に戻ることがないこと)で、治療しても正常な状態には戻りません。
脳細胞は基本的に障害を受け、細胞が壊死(えし)してしまうと元に戻らないと言われています。
病気を引き金に認知症になる原因はここにあります。
これらを踏まえ、
認知症によって、わがまま、暴言をはくといった行動変化について解説します。
認知症は脳の萎縮、わがままや暴言に
認知症によって、わがまま、暴言といった原因は
脳の
- 大脳新皮質の萎縮
- 前頭葉の萎縮
大脳新皮質
脳の表面部分を大脳皮質と呼ばれ、前頭葉・頭頂葉・側頭葉・後頭葉と左脳、右脳の各部に分類することができます。左脳、右脳は脳梁でつながっています。人間の思考などの中枢。
引用:https://akira3132.info/cerebral_cortex.html
- 感情
- 情動論理
- 思考
- 知能
- 感覚
など、あらゆる機能を司っています。
脳全体が萎縮をすると、人間らしさが総合的に失われてきます。
認知症による人間らしさの低下例として、
- 汚くても気にしない
- 見映えを気にしない
- 思いやりにかける
などがあります。
昔と今で、ご本人の生活様式、人格が突然変わることも脳の機能低下が疑われます。
前頭葉
行動による結果の認知や、行動の選択、物事の類似点、相違点の判断
引用:https://akira3132.info/cerebral_cortex.html
人格を作ったり、感情をコントロールしたり社会性を作ったりしていると言われています。前頭葉がダメージを受けると怒りっぽく成ったり、理由もなく隣の人を殴ったり、町を徘徊したりする症状が出ると言われています
体の動作、感情のコントロールに関わります。
- 我慢をする
- ぐっと抑える
- 怒らない
など感情の調整をする機能を担っていますので、萎縮して機能低下が起こると、抑制(がまん)が利かなくなります。認知症で暴言をはいたり、いきなりキレたりするのはこのためです。
認知症のお年寄りが子どもっぽくなってしまうのも、大脳皮質、前頭葉の萎縮による論理的思考の低下が原因と言われており、認知症が悪化するとさらに顕著となります。
認知症は記憶が断片的に欠落
・暴言をはいてしまう
・子どもっぽく言うことを利かない(自分の正論を貫く)
認知症でこれらが起こる要因として記憶の欠落も心理的背景として関わります。
記憶は「質」や「持続時間」で分類することができ、
- エピソード記憶
- 手続き記憶
- プライミング記憶
- 長期記憶
- 短期記憶
と分けられます。
認知症の記憶障害は、エピソード記憶が断片的に欠落する特徴もあります。
認知症のタイプ、その人の特徴によりますので必ずすべて当てはまるわけではありませんが、重度の認知症では数分前のエピソード記憶が無くなります。
例えば、
- 1時間前に出かけたこと
- 30分前に話した電話の相手
認知症は連続的に分かっていたことがいきなり分からなくなりますので、精神的ダメージはとても大きいです。
・自分を忘れないため
・自分でいたい
思い出す時は上の図でいくと
「気色の部分」+「感情」
この2つで連携をとって覚えている記憶を繋ぎあわせていきます。
そのため、欠落した部分を埋めようと感情が働き、間違っていることも正論として主張してしまいがちになることがあります。(認めたくない)
忘れることはとても怖いことです。
あなたの家族、大切な人が分からなくなったら、あなたはどんな気持ちになりますか?
認知症には忘れてしまう恐怖があります。
認知症でわがまま、暴言があってもココは大切
認知症ケアの重要ポイントです。
わがままや暴言になる原因を理解するために大切です。
わがまま、暴言があっても自尊心は残る
認知症になっても「自分である」ことは保たれます。
- 忘れているから
- ぼけているから
- 何いっても分からないから
こういった姿勢で雑なケアをしていくと、本人には「嫌なこと」として断片的な記憶が残ります。
認知症の方は、断片的なエピソード記憶を繋ぎ合わせて再生する(思い出す)ため、少しでも嫌なエピソードがあれば、
内容はしっかり思い出せなくても、感情が「嫌」という認識を示すように働きかけます。
そのため、本人は「怒る」という姿勢を表しますので暴言もあり得ます。
認知症の方は、論理的〈 本能的 です。
認知症でわがまま、暴言は不調サインの現れ
認知症は記憶障害から言葉を忘れる場合もありますので、伝えるすべが分からなくなります。
生後2~3ヵ月の子どもと同じように考えてみましょう。
体調に変化はないか?
認知症になることで論理的に伝えられない
- 痛みを感じる
- どこが痛いか探る
- 伝える言葉を考え、選択する
- 発信する(人に伝える)
こんな工程がありますが、生まれた子どもはこういう流れがありません。
何かあれば泣きます。
「おなかがすいた」
「おむつが汚れた」
「なんか不快」・・・など。
認知症でわがまま、暴言をはいてしまう場合も同様に考えてみる観点が必要です。
- 便秘
- 空腹
- 背中やお腹の痛み(内臓痛なのか筋痛なのか)
日々介護をしていくと体調の変化が掴めるようになります。
ひとつの要因として考えてみましょう。
【まとめ】認知症でわがままに?暴言の本質とは
- 認知症のわがまま、暴言は脳機能の低下
- 悪いケアをしていませんか?
- 具合が悪くても伝えられない
これらは、認知症のケアをしていく中でとても大切になる考え方です。
身内、近しい人の介護をしていくと、距離が近いせいか、言葉遣いも近くなりがちです。
- いつものことだから
- また始まった
- もういいや
慣れるとこんな感じになりがちですが、不調のサインを逃すことにもなります。
在宅で認知症のケアを通し、わがまま、暴言を受け、それが毎日続くと「在宅介護の限界」に達してしまう方もいますが、少しでも違う視点から認知症を患った方をみていくと、心に余裕がでると思います。
在宅介護を応援しますが、在宅介護が限界に達するときもあります。
「もう限界・・・」とはどんな状態なのか?
こちらの記事が参考になりますので一読してみてください。
コメント