祖父(おじいちゃん)、祖母(おばあちゃん)が脳血管性認知症になっちゃった。
脳血管性認知症の介護をしているけど、不安で仕方がない。
どんな病気なんだろう。家で介護できるのかなぁ・・・
前に脳の病気を何回もしているけど大丈夫なのかなぁ。
良くなるのか心配、どうなるんだろう。
これからどうすればいいの・・・。
こんな疑問を解決します。
脳血管性認知症は、脳卒中(脳梗塞、脳出血)が原因で引き起こされる認知症です。
何度も「脳の病気」をしていると心配になります。
片麻痺の状態で認知症になってしまう方も多くいますので、とくに在宅で介護をしていると不安ばかりです。
脳血管性認知症の介護は、一般的な認知症の介護と対応は大きく変わりません。
抑えるべき関わりのポイントがあります。
発症の原因は、脳の病気です。
日常生活で身体の介護が必要になることもありますが、日常生活の観察やリハビリテーションが再発を防いだり、悪化を防ぐポイントになりますので解説をしていきます。
執筆者の経歴
- 作業療法士10年以上
- 勤務歴(病院・介護施設・児童支援・就労支援)
- 現在は就労支援に従事(障害のある方のリクルート)
病院勤務では脳卒中センターの勤務で、施設でも多くの脳血管性認知症の利用者様と接してきました。
脳の病気が原因ですが、日常生活の介護が必要ない方も多くいます。
作業療法の観点から介護のポイントを綴りたいと思いますので、ご活用ください。
脳血管性認知症の介護を知る
はじめに、脳血管性認知症の介護について総括して解説していきます。
介護・ケアの方法は最後に記載しますので、必要な部分のみご覧ください。
- 脳血管性認知症ってなに?【介護で活用できる】
- 脳血管性認知症って悪くなるの?介護は無理なの?
- 脳血管性認知症ってよくなるの?治療方法とは?
- 脳血管性認知症の介護・ケアのポイント
- 脳血管性認知症にならないためには?
脳血管性認知症ってなに?【介護で活用できる】
○:知っている状態で介護をする
☓:何も知らないで介護をする
介護の対応で「差」がでます。
概要を抑えると発症予防にも繋がり、介護の質も合わせてアップしていきます。
- 脳血管性認知症は「脳血管障害」が原因
- 脳血管性認知症ってどんな症状?
- 脳血管症認知症は他の認知症と違うの?
- 脳血管性認知症って多いの?
脳血管性認知症は「脳血管障害」が原因
脳血管障害とは脳卒中(主に脳梗塞、脳出血)をいいます。
脳梗塞:脳の血管が詰まり、脳細胞に必要な血液が流れなくなる
脳出血:脳の血管が破れて出血してしまい、血液が脳細胞を圧迫したり、脳に必要な血液が供給されなくなる
書いてあることは難しいですが、概要は以下の文献が参考になります。
脳の病気は突発的(いきなり)ですが、発症してしまうための危険因子を、以前から持ち合わせている場合が多いです。
- 乱れた食生活(脂っこいものがメイン、野菜を食べない)
- 高血圧
- 高脂血症
- 糖尿病
医師から管理が必要と言われているにも関わらず、疎かにしていた結果、脳卒中に繋がってしまいます。
脳血管性認知症ってどんな症状?
抑えるべきポイントは3つです。
- 運動麻痺などの脳血管障害症状
- まだら症状(まだら認知症)
- 基礎疾患
運動麻痺などの脳血管症状が「病巣」によってみられる
脳梗塞、脳出血を起こすと、病巣部位によって
運動麻痺:手足の麻痺
感覚障害:手足の感覚がわからなくなる
言語障害:失語症(言葉がでない、ろれつが回りにくい)
高次脳機能障害(失行、失認、注意障害、遂行機能障害など)
などが起こります。
精神症状として
感情の低下:うつっぽくなる
抑制の低下:我慢が効かなくなる
自己中心的:社会性の低下
易刺激性 :些細なことですぐ不機嫌になる
妄想 :訂正ができない考え
などがみられます。
症状は病巣によりますので、すべて出現するとは限りません。
- 脳梗塞などの症状はなく手足はよく動くが、うつっぽい
- 片麻痺でキレやすい(易怒的)
- 歩行はできるが右手だけ動かしにくく、話しにくい
など様々です。
まだら症状(まだら認知症)
「まだら」とは現れたり、現れなかったりするという意味です。
認知症の症状に波があります。
下記の図が参考になります。
- 一日の中でいきなり認知症が出現したり、しなかったり
- 認知症のスイッチの感覚が徐々に狭くなったり
- 今まで~ができていたのに、いきなり~ができなくなったり
脳血管性認知症でみられる最大の特徴です。
介護をしていると、周辺症状(BPSD)との判断が難しくなる場合もあります。
高血圧、高脂血症、糖尿病など基礎疾患がある
脳卒中(脳梗塞、脳卒中)の危険因子に基礎疾患があります。
これは生活習慣病から派生されるものです。
- 生活習慣病(栄養素の偏り)
- 運動不足
- 生活リズムのみだれ
などによって引き起こされます。
また、健康診断を受けず加齢によって生じた変化をそのままにしておいた結果、発症に繋がってしまうケースも考えられます。
「血圧」や「血糖」のコントロールは、内服薬や運動の継続が欠かせなく、想像以上に忍耐力が求められます。
こういった体調管理の不行き届けが悪い結果をもたらしてしまいます。
脳血管症認知症は他の認知症と違うの?
結論:他の認知症とは違います。
前述したように、脳血管障害(脳梗塞、脳出血)が原因になっています。
特徴は、
- 脳出血、脳梗塞などの脳血管性障害(運動麻痺、感覚障害、高次脳機能障害など)
- まだら症状(認知症が出ているとき、そうでないときがある)
認知症の分類は以下が参考になります。
詳細まで触れませんが他の認知症の特徴を簡単に記載すると、
脳血管性認知症って多いの?
認知症の分類のなかでは、第2位です。
高齢になると基礎疾患の治療ため医療機関にかかる割合が多くなります。
前述しましたが、生活習慣病が脳血管性障害を引き起こす原因のひとつです。
脳の病気は珍しいものではありません。
日本の死亡原因は、
第1位 悪性新生物(ガン)
参考文献:
第2位 心疾患
第3位 脳血管性障害
第8表 死因順位1)(第5位まで)別にみた年齢階級・性別死亡数・死亡率(人口10万対)・構成割合2)
「脳血管性認知症」は身近な認知症です。
男女比割合をみていくと、男性が多い傾向になっています。参考文献:公益社団法人 日本認知症グループホーム協会
脳血管性認知症って悪くなるの?
段階的に認知症が悪くなると言われています。
脳梗塞を繰り返すたびに、身体機能が低下し認知機能も悪化します。
基礎疾患には、高血圧、糖尿病、ガンなどが多く、それらの治療および管理が先ず必要です。
周辺症状が障害された部位によって現れた症状なのか、または身体症状の変化と混在して多彩な症状を呈しているのか区別がつきにくいようです。障害された時間の経過に従って、あるとき突然悪化するといった階段状悪化が特徴的といわれています。
参考文献:認知症について 総論3 認知症の症状とケアにあたっての留意点を学ぶ。
原因が脳梗塞、脳出血など脳血管障害ですので、再発が繰り返されると徐々に悪くなっていきます。
認知症も段階的に進行していきます。
特に微小梗塞(ラクナ梗塞)の場合、小さな脳梗塞がたくさんある状態です。
脳梗塞の進行と共に、段階的に悪化しないよう予防や早期発見が大切になります。
「癌(ガン)」と違い、脳血管性認知症による余命宣告はあまり聞かない
脳出血や脳梗塞の発生場所が悪いと意識障害が起こることがありますので、そういった場合は医師から説明があると思います。
末期はADL(日常生活能力)低下による「寝たきり」
認知症に限らず、どの病気も同じです。
「運動=歩行や生活動作」が成立しなくなると「寝たきり」が続き、身体機能が廃用(低下)していきます。
体を起こすことができないと筋力低下を引き起こし、寝たきりとなってしまいます。
脳血管性認知症ってよくなるの?治療方法とは?
病巣によって認知症が引き起こされていますので、脳梗塞や脳出血を解決していけば認知症は改善されていくケースが多い印象でした。(私の臨床経験です)
高齢者の場合、加齢に伴う身体機能の衰えがあるため、一度失った能力を全回復させるには時間を要したり、最大限まで回復が見込めない場合があります。
脳がダメージを受けますので、生活に大きな支障がない程度で軽い物忘れが残っていたりします。
おもな治療方法は以下です。
- 脳血管性認知症の治療薬
- 脳血管性認知症のリハビリテーション
脳血管性認知症の治療薬
認知症の進行抑制がおもな目的です。
薬だけ飲んでいれば「階段が上がれる」「生活動作ができる」「物忘れが回復する」
こういった感じではありませんので、介護をしていても変化がわかりにくいです。
後述する、リハビリテーションをセットにして認知症の治療効果が発揮されます。
脳血管性認知症のリハビリテーション
私の専門分野です。(作業療法的観点から説明します)
脳血管性認知症に(認知症全般にも言えますが)リハビリテーションは欠かせません。
「リハビリが良い」という文言はweb検索をすれば「ブログ」や「記事」など出ますが、具体的なメニューは記載されていないことが多いです。
機械的に決められるものではありませんし、対象者の体調にもよります。
訓練的に考えると介護ではとても難しいですので、日常生活でも取り入れられる方法を記載します。
日常生活で使える運動療法
運動は前頭葉を活性化させて認知機能低下防止を図りますので、認知症の予防になります。
とくにリズム運動はセロトニン分泌も増え、気分も変わってきます。
日常生活で簡単に取り入れができる運動が以下です。
など
私たちが何気なく行っている生活動作全般に「運動要素」が満載です。
また、脳を使う要素も散りばめられていますので、脳のトレーニングにもなります。
生活動作は介護をしていると、思いつくことが多いのではないでしょうか?
注意点は以下です。
①:絶対にできそうもないことは「やらない」
例えば、右手が動かないのに無理やり右手を使わせる
できないことは自信の喪失に繋がりますし、やりたくない気持ちが強化されます。
②:必ず本人と一緒に行いサポートをする
できないところはサポートをして手伝いましょう。
できないところ、できそうなところが、介護をしていて分かるようになってきます。
脳血管性認知症の介護・ケアのポイント
介護のポイントについて。
作業療法を通して、見えてきた内容をお伝えします。
在宅で介護をされる場合でも有効ですし、老人ホームなど施設で介護にあたっている職員さんも参考にしていただければと思います。
ポイントは3つ
- 概要は必ず抑えて学ぶ
- 脳血管性障害は生活リハビリが欠かせない
- 日々の生活で細かい経過観察
概要は必ず抑える
「まだら症状」「進行性」このキーワードを知らないで認知症の介護をしていくと、介護する側のメンタルや介護技術に大きな差が出ます。
「まだら症状」で介護の方法を変える
例)とある昼食後の様子
お昼ごはん美味しかったよ。B子さんの煮物が食べれてよかったわ。
さてさて、ちょっと休みたいねぇ・・・。
部屋まで送りますから休みましょう。
⏬ 10分後 ⏬
(ガサガサ)
ねぇ、B子さん。
さっき買い物一緒に行ったよね、買ってきた物はどこにあるの? (昼食時の記憶が、買い物に行った過去とゴチャゴチャになっている)
(あっ、始まった)
持ってきますので、お茶でも飲んでください。
( お茶を持ってきて座らせる )
●●さんに聞くから、テレビでも観てくださいね。
なに観ますか?
そうかい、2chをお願いね。
⏬ 30分後 ⏬
おばあちゃん、少し休めた?
うん、B子さんの煮物、本当に美味しかったよ。
こんな感じでスムーズに切り返しができると、お互い気持ち良いのではないでしょうか。
もちろん、介護をしているとうまくいかないときのほうが多いです。
(あっ、始まった)という部分が脳血管性認知症について知っているか、知らないかの差です。
知らなければ、「知らないよ!」「買い物になんて行ってないでしょ?」って怒鳴っていませんか。
生活リハビリとしての介護
脳血管性認知症は「生活リハビリ」が欠かせません。
(どの認知症も生活リハビリは欠かせません)
「介護」は「安全に」という意味合いもありますが、生活のなかでリハビリの要素をいかに入れられるかという視点が大切です。
なるべく残存機能(できることを)を利用して生活して貰えるよう、できることは本人に行っていただく介護が、機能低下を予防していくために必要です。
とくに認知症は、使わなければ忘れていってしまいます。
残存機能を利用して動いてもらう介護
片麻痺や筋力低下でふらつきがあるなど、明らかな危険因子があれば最低限の介助は必要ですが、なるべく本人に力を入れてもらう対応が好ましいと言えます。
手を使った作業を行う
手先は運動野の血流量を増加させるという研究結果が出ています。
参考文献:複雑な指運動は本当に脳の活動を促すのか?
何でも構いません。
- パソコン
- 編み物
- 将棋・囲碁・オセロ
- トランプ
- 折り紙
- 字を書く
- 麻雀
- スロット
など、
指先を使った活動を取り入れてみることも、認知症の機能低下を予防することになります。
日々の生活で細かい経過観察
いたって普通ですが、とても重要です。
そのひとの生活スタイルをみて覚えておくことは、悪くなったときの早期発見に繋がります。
ひとには癖、特徴があります。
- 食べるときに味噌汁を右手だで飲む
- いつも○○で▲▲をしているときがある
- 話すときはいつもゆっくり口調
- 独歩ですらすら歩いている
など、何でも構いません。
在宅でも、施設でも介護を続けていくと自然と生活動作が目にハマってきます。
脳血管障害はいきなり発症しますので、生活動作が変わったかどうか気づけるかが大切なポイントです。
脳の病気ですから、発見が遅くなればなるほど、悪い結果にもなりかねません。
何気なく介護をしながら過ごす時間には、大切な意味が込められています。
認知症の介護と生活は大きな関係があります。
脳血管性認知症にならないためには?
結論:生活習慣病の予防をする
- 高血圧に対する降圧療法
- 禁煙
- 適度な運動
- 肥満予防、体重管理(適切な食事)
生活習慣病を悪化させないために、適切な食事、生活リズムを整える。
そして、適度な運動をする。
血圧のコトンロールは難易度が高い課題
脳血管障害を予防するため「血圧のコントロール」は必須です。
タバコは末梢血管を収縮させる効果がありますので、血圧が上がる要因になります。
夏や冬といった季節によっても、血管の収縮が変わります。
前者は下がり、後者は上がる傾向です。
コントロールが非常に難しいため、血圧計を用意し、実際に測定して数値を把握していくことが必要です。
メモ帳やノートなどに数値を記載することで感覚がつかめるようになります。
処方された内服薬は必ず自己判断でやめず、かかりつけの医師と相談すべきです。
自己管理できない方ほどリスクが高くなる傾向です。
【まとめ】脳血管性認知症の介護を知る【介護で活用できる】
脳血管性認知症の介護ポイント
①介護のための概要を抑える
- まだら症状
- 脳血管障害が原因
②リハビリをする介護を実施
- 本人の残存機能(できること)を引き出す
③何気ない日常生活の経過観察が大切
- 早期発見につながる(認知症の悪化)
脳血管性認知症の介護は、脳血管障害の発症部位によって介護方法、関わり方も変わってきます。
易怒的になったり、いきなり認知症の症状が出たり、難しい対応を迫られることもありますが、特徴に合わせた介護をすることが大切です。
認知症の介護は、相手との距離間を意識して行うことが基本的な対応で、脳血管性認知症の場合も同じです。
リハビリの要素を意識した介護は、そのひとができることを持続させることに繋がります。
知っているか、知らないかで介護技術に差が出てきますので、ご活用いただければと思います。
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